2019年04月

2019年04月27日

勝ち組

デイサービスに行くようになった母は、1日1日元気になっているように感じる。
やはり、人は日々他人と接し、良いことも嫌なことにも向き合いながら生きていくことが大切なのだと痛感した。

区から母の健康診断書が届いたので、さっそく掛かりつけ医に予約し、健診に行ってきた。
これまでも大病はしたことがないうえに持病もなく、普段から薬も飲んでいないが、今回の健診でも大きな異常はなく、医師も驚いていた。

その時「この歳でこれだけの結果を出せるなんて、あなたは勝ち組ですね」と医師から言われた。
ほぉ~!先生ったら、うまいこと言うな~と感心したと同時に、確かにこの歳まで元気に過ごせ、異常もなく日々元気に生きていられることこそ、まさに「勝ち組」の証だ。

世間では、事業に成功したとか、出世した、名声を上げたといったことが「勝ち組」と言われがちだが、その名声は永遠に続くものではないし、築いた財産だって死んでしまえば手放さざるを得ないし、会社を辞めればタダの人だし…と思うと、人の勝ち負けは、この世を去る間際にしか判断出来ないのではないか?とも思った。

長い人生、どんな生き方をし、どれほど多くの人たちの役に立てる生き方が出来たか?その真価が問われる時にこそ、自身が「勝ち組」だったのか「負け組」だったのかが分かるのだ。

心身共に健やかな老後を過ごす=勝ち組となれるかどうかは、自身のこれまでの生きざまの結果なのだ。





2019年04月10日

エピソード7:新たな世界へ10


今日から母が歩行訓練施設に通い始めた。
初日ということもあり、いつもは何にも動じない母ではあるが、ちょっとばかり緊張していたようだ。

自宅までスタッフが迎えに来てくれる。
すでに5人のお友達が乗車していたので、皆様に挨拶をし、母を送り出した。

母にとってはこの歳で迎える新たな世界の扉を開いた瞬間だ。
歳を経るほど、新開拓をする機会は減ることを思うと、今回のことはまさにご縁の巡り合わせだな、と思う。

午前中いっぱいをかけてプログラムを進める。
帰りはまた自宅まで送ってくれる。

久しぶりに長時間外の世界に触れた母を心配し、会社から昼過ぎに電話をしてみた。
すると、声も弾んでおり、「楽しかったよ!」とのこと。

ああ、良かった~~と、受話器越しに私は胸を撫でおろした。
これからも、元気に通ってくれることを願っている。


2019年04月07日

エピソード7:新たな世界へ9


先週末、ケアマネさんと、訓練施設の方達と最後の打ち合わせと契約手続きを兼ねた面談があった。
これからのケアプランや、施設での説明などを受けた。

ついこないだまでは「もう死にたい」と言っていた母だったが、翌週から行ける施設のことや、他の人達と触れ合えることを想像したようで、徐々に表情も明るくなった。

彼らが帰った後、「来週から行くのに、靴がない、ズボンもない、買って!」と言い出した。
「もちろん!じゃ、一緒に買いに行こう!」そう言い、この土日はその準備のための買い物にも出かけた。

今年に入って初めての買い物だったし、バスにも乗った。
人の気力たるや、何か目的が生まれると、こんなにも元気になるのかと、驚かずにはいられなかった。

行き始めたら始めたで、イヤなこともあるかもしれないが、それも含め、良い刺激を受けて、生きる糧になることを祈るばかりだ。


2019年04月06日

エピソード7:新たな世界へ8


過去の悪夢を真逆の言葉に転換することで、自分との闘いに負けることなく、母の機嫌も良くなるという、ウインウインの状況に変わることを身を以て体験した。

そうは言いつつも、それも長くは続かない。
というのも、私が褒めれば褒めるほど、母の猜疑心が膨らんでいったからだ。

「子供の頃は心ないことばかり言われたけど、私は言わないし、叩いたりしないよ」という私の言動が、母の中にある罪悪心を呼び覚ましているのか?その言動に傷付いたのか?徐々に私からの褒め言葉を訝しがるようになっていった。
私から褒められれば褒められるほど、イライラが募る、と言うのだ。

それは、自分が発した言葉や態度が、真逆となって返ってくるのだから、それらが心に尽き刺さるのかもしれない。それでも私は負けじと、褒め続けた。

ケアマネさんとの面談や、歩行訓練施設のスタッフの方々に褒めちぎられた時の母の反応は、意外にも?良いものだった。その言葉を疑ったり、すねたりすることなく、素直に受け止めていたのだ。

子供である私の言葉には複雑な感情が生まれるようだが、他人様の言葉には心が開くようだ。
こうやって、外界の刺激を受けることが、何より大切なのだ、ということを学んだ。


2019年04月05日

エピソード7:新たな世界へ7


子供の頃、両親から厳しく叱責された記憶が度々蘇ることがある。
時代背景のせいもあるが、その中では時に暴力を振るわれたことも数知れずあるものの、その時代はそれが普通だった。

幼子に戻った母は、昔の自分を見ているようでもどかしいことが増え、何か事を起こす度に怒りの感情が沸き起こることもある。そんな時、幼い頃に言われた母の言葉を思い出すし、つい同じことを言いたくなる。

だが、それではいけない!と自分に言い聞かせ、心の中で振り上げた拳を何度おろしたか数えきれない。
それほどまでに、幼い頃に受けた親からの躾という名の暴言や暴力は、私の心に根付いているのだ。

それを言い訳にして親と同じことをすれば、自分に負けたことになる。
さらにそう自分に言い聞かせている。

親と同じことをしそうになった時は、「褒める」「笑う」に無理やり転換することで、自分を制御している面もあるし、そうすることで、嫌な気持ちが無くなる。

言霊とは言うが、口にすると、それが本当になっていくように、母を労い、褒めることで、私は自分に負けずにいられるのだ。




2019年04月04日

エピソード7:新たな世界へ6


姪が高校生の時にピアノを教えて欲しい、というので3年間ほど教えていたことがある。
その時姪に言われたのが、「私は褒めて伸びるタイプだから、褒めて育ててね」だった。

現代っ子の言いそうなことだな~と思いつつも、これからの世の中は、"叱る"より"褒める"、が主流になるのだろうな…という予感もあった。

母は今まさにその只中だ。
長い年月、家族のため、社会のために働いてきたのに、高齢になったら用無しのように、誰からも声がかかることもなく、家でテレビだけが友達となってしまった。

そんな時、他人から「スゴイですね!若いですね!立派ですよ!!」なんて言葉をかけられたら、ウソでも嬉しいのが人情だろう。
だが、施設の方々は心からそう感じてくれていることが伝わってくるのだから、母にとってはまさにご機嫌さんになるのは言うまでもない。

だが、それは他人から褒められないと意味がないのだ。と、切実に感じた。


2019年04月03日

エピソード7:新たな世界へ5


インストラクターの女性スタッフが母の手を握り、「良く来てくださいましたね、一緒にがんばりましょうね。よろしくお願いします」と、笑顔で対応してくれた。
それだけで、母は既に嬉しそうだった。

椅子に座ったまま、背伸びをしたり、上半身をひねったりするストレッチを4つほどやった。
ものの10分ほどのことではあったものの、ストレッチを始める前よりも上半身は伸びるし、椅子から立ち上がった後の歩行の可動域がグン!と広がった。

それには、スタッフも私もビックリ!
「さきほどと歩き方がまったく違いますよ!」と、言われたほどだし、私もそう感じた。

家でも軽いストレッチなどはやってはいるものの、プロの方にきちんと教えてもらう、外の刺激を受ける、ということがより大きな効果を生んでいるのだろう、と思った。

そして、何より「誉めちぎられたこと」が、一番の特効薬?のようだった。
ということで、4月からこのサービスを受けたい!と、母が言い出した。




2019年04月02日

エピソード7:新たな世界へ4


ケアマネさんから紹介された、歩行訓練施設を見学に行くことになった。
我が家から徒歩で15分ほどの場所だが、母の体力ではそこまでも歩けない。
すると、施設で送迎もしてくれると言うのだ。なんとありがたい!!

見学も送迎付きで、若い男性スタッフが迎えに来てくださった。
高齢者のリズムに合わせてくれるし、常に笑顔で対応してくれる。
何とも出来た方だな~と、感心しきり。

施設に到着すると、他のスタッフの方々も挨拶に始まり、笑顔満開だ。

既にその日のプログラムは開始されており、15名ほどの高齢者が椅子に座ったままヨガをやっていた。
ヨガといっても、ヨガをメインにしたストレッチだ。
無理なく体を緩め、伸ばす…小1時間ほどゆっくりやった後は、お茶タイムだ。

みなさんがお茶タイムの間、母が体験レッスンを受けることになった。



2019年04月01日

エピソード7:新たな世界へ3


対応してくれたケアマネさんは、寝たきり専門の方だったため、後日、比較的元気な人担当のケアマネさんが来宅してくれることになった。
これまた土曜日にお願いすることが出来、土日が休みの私にとってはありがたかった。

我が家を訪ねてくれたケアマネさんは、母の話に耳を傾けながら、普段の暮らしぶりをつぶさに観察してくれているようだった。
極力私は口を挟まず、母が言いたいことを言うに任せた。

家族であれば、恥ずかしいようなことを口走ることもあるが、そこはグッと我慢だ。
どんなことも母の口から伝わることが大切だからだ。

その後は母の心身の機能をチェックし、介護申請が出来ることになった。
要支援1か2になるであろう、ということであった。

その際紹介してもらったのが、ヨガをメインとした歩行訓練に特化した施設だった。